花粉症の猛威:原因と対策

【要約】今年のスギ花粉は数年ぶりに多く飛んでおり、全国で花粉症の患者が増加しています。特に若年層が多く、春先の症状に初めて苦しむ人もいます。戦後のスギ植林が原因の一つとされますが、周囲の理解と支援も必要です。(by chat GPT)

今まさに「花粉症」が猛威を振るっています。暖かく風の強い晴天の日には、鼻水がひっきりなしに続き、くしゃみを繰り返す方が各地で後を絶ちません。また眼の痒みがひどく、涙が止まらない人も多くなっています。
今年はスギ花粉が数年ぶりに、とても多く飛び交っています。花粉の飛散予報では、特に西日本で「多い」または「非常に多い」と、連日のように報道されています。
私が運営する「蒲田よしのクリニック」(東京・大田)でも、毎日の様に花粉症による諸症状、つまり多くの鼻水、鼻詰まり、目の痒み、流涙に悩まされている方が、たくさん来院します。
その中でも、くしゃみや鼻水が延々と続き、診察時のお話すら充分に行なえないくらい、著しい症状の方もおられます。それこそ花粉症は例年やってくる季節の病であり、「また花粉症の季節が来たか・・」と憂うつな気分になります。
中には昨シーズンまで縁がなかったのに、今春になっての「花粉症デビュー」という方も散見されます。すなわち花粉症の症状が初めて現れてきた、というのです。
さて花粉症では患者層の特徴として、若い方が目立つ、という事が挙げられます。具体的には10代から40代という若年層が大部分を占めています。対照的に50代以上という中高年では少なくなっています。つまり若者の罹患率が高い疾患なのです。
例えば60代あるいは70代というご高齢の方は、口を揃えて「私の若い頃は、花粉症なんて見た事も聞いた事もなかった」などと述懐されます。
確かに50年くらい前、つまり高齢の方が若かった頃には「花粉症」という疾患名が殆んど知られていなかったのみならず、花粉症らしい症状、つまり春先の2~4月頃にくしゃみや鼻水、目の痒み等の症状に見舞われる方は、極めて少ない状態でした。
それでは現代には、なぜ花粉症を発症する人が、これほど増加したのでしょうか。よく言われる事ですが、終戦後まもなくの時期に「スギ」の植林が大規模に行われ、結果的にスギの花粉が最近とても増えている、という見方があります。
実際に、戦後復興の一環としての建築ラッシュではスギの植林が盛んに行われ、スギの花粉量が飛躍的に増加しました。とはいえ「花粉症」の罹患者が増えた原因は、果たしてそれだけでしょうか。
花粉症の患者さんと、その周りの方々を見て一つ気付く事があります。それは花粉症の方が花粉症の症状で辛い思いをしている一方で、周りの家族や同僚、友人などは平然とした顔をしており、くしゃみや鼻水などの症状は全くない、という明確な個人差です。
花粉が飛び交う環境を共有していても、花粉症になる人とならない人がいる事になりますが、その差はなぜ生じるのでしょうか。それは花粉量という「環境要因」と並んで、あるいはそれ以上に、個人に特有の「体質要因」が重要なファクターとなっているためです。
花粉症、言い換えると「アレルギー性鼻炎」の発症率には、国や地域によって大きな違いがありますが、先進国と新興国との差が最も明瞭です。統計上は平均して、先進国は新興国の数倍にも及ぶ高い発生率を示しています。
医学が進み清潔な環境である先進国に於いて、花粉症をはじめとするアレルギー疾患が多いのは、どういう事情によるのでしょうか。実はその「清潔」である事が、皮肉な事にアレルギー疾患を増加させているファクターの一つとなっているのです。
アレルギーを悪化させる要因としては、ダニやカビなどの微生物だけでなく、各種化学物質やストレス、栄養バランスの乱れ、睡眠不足など様々なものが指摘されていますが、とりわけ重要視され始めている要因として「過度に清潔な環境」が挙げられます。
昔はどの国でも、子供は仲間と泥だらけになって遊んだものですが、現代の先進国では、子供が泥遊びをする時間も場所も殆んどありません。代わりに塾通いやお稽古に忙しく、ゲームやインターネットなどに興じており、いたって衛生的な環境で生活しています。
その影響により、先進国の子供は細菌やウイルスによる感染症の発症率や死亡率は低く留まるのですが、その代わりに花粉症や喘息など「アレルギー疾患」が多くなっているのが現状です。それはいったい何故でしょうか。
我々は細菌やウイルスなど外敵から身を守る「免疫系」を常備していますが、過度に清潔な環境に暮らしていると、細菌やウイルスとの接触が極端に少ない状況が続きます。そうすると免疫系に一種の機能不全が発生し、花粉やダニなど「日常的な異物」に対して過剰反応を生じやすくなります。
一つの端的な例が「寄生虫」といえます。50年ほど前まで、我々日本人にとって蟯虫などの寄生虫は、いたって身近な存在でした。小学校では「虫卵検査」が毎年のように行われ、寄生虫が見つかると「虫下し薬」を飲まされた記憶のある方も多い事でしょう。
一方で最近の子供は「寄生虫なんか見た事ない」と異口同音に話します。実際に寄生虫が体内から検出される子供も殆んどいません。ところが寄生虫が減少した事がアレルギー疾患に罹りやすくなった背景の一つである、という臨床研究があります。統計的にも、寄生虫の保有率が低い地域では、アレルギー疾患の罹患率が高いとされています。
清潔な環境に慣れてしまった我々先進国の現代人が、そのような清潔な環境を維持しながら、アレルギー疾患を回避する手段はないのでしょうか。その手段の一つは「腸内環境」の改善ですが、これについては改めてお話いたします。