内科なのに、まるで心療内科

「薬が効かない!」と訴えて来院した方が、最初に語るのは?

私の経営する東京大田区「蒲田よしのクリニック」に於いて、ラドン温浴やプラセンタ注射などに定期的に通っている方々は、日頃から風邪一つひかずに安定した体調を維持している方が大部分です。逆に通院を途中からお休みしたような方は、いつの間にか体調を崩してしまう方が後を絶ちません。

2020年春から流行が始まった「新型コロナ感染」に於いては、コロナにまつわる様々な体調不良やメンタル不調に見舞われた多くの方々が来られました。コロナ感染への不安や経済的な困窮、慣れないテレワークなど、体調不良に至る経緯は十人十色ですが、世間では「コロナうつ」とか「コロナ疲れ」などと報道されたものです。

一方そのような方々からお話を聞いていると、確かにコロナ関連の問題が心身の不調の引き金となっている様なのですが、悩まされている症状の種類や血液検査データの異常値などは、コロナ以前から長きにわたってみられた不調や異常値と比べ、基本的にさほど変わりがない事も少なくありません。

以前から長きにわたって見られた不調とは何か。当院は内科のクリニックではありますが、来院する方々の多岐にわたる症状をリストアップすると、憂うつ感や不安感、不眠、パニック障害など、いわゆる「メンタル不調」の諸症状がたいへん多くなっており、まるで心療内科のような雰囲気です。

来院患者の男女比では女性が何と9割前後を占め、40~50代すなわち更年期世代に該当する女性が最大多数派を占めています。いわゆる「更年期障害」の諸症状に悩まされている女性がとても多く、この方々がプラセンタ注射やラドン温浴などに取り組む主力の患者層となっています。

更年期障害といえば、ホットフラッシュともいわれるのぼせ感や多汗などの症状がしられていますが、それ以外に怠さやめまい、頭痛、のどの違和感といった身体的な症状がある一方、うつ症状や不安感、不眠、パニック発作などの精神的な症状が加わり、実に多彩な症状となっているのです。

そのような患者層の傾向は、クリニックを開院した2011年から一貫して継続しているのですが、ここ数年の状況をみると、そのような更年期世代が増えただけでなく、20~30代の若い女性、それに男性の患者も増えてきました。そのようにして患者総数は徐々に増加しているのが現状です。

ここ数年とりわけ増えてきた20~30代の若い女性は更年期世代に比べると、うつ傾向や不眠、不安感などメンタル不調の諸症状が、特に顕著な傾向がみられます。そのような患者背景が影響し、あたかも心療内科のような状況となっているのです。

来院する新規患者のうち大雑把にいって約半数が、ほかの病院やクリニックに通院して治療中であるにも関わらず、当院に敢えて受診するのですが、通院中の診療科で最も多いのが、精神科または心療内科となっています。20~30台といった若い世代では男女ともに、その傾向が明らかです。

精神科や心療内科に通院中であるにも関わらず、なぜ敢えて当院も受診しようとするのか。大半の患者が話すのが「薬を飲んでいるが、症状が改善しない」とか「薬がだんだん効かなくなってきた」あるいは「薬の副作用が怖いので、可能ならばやめたい」など、薬にまつわる不安や不満となっています。

うつや不安神経症など精神疾患に使用される薬剤としては「抗うつ剤」「抗不安薬」「睡眠導入剤」などがありますが、多くの患者でよくみられる傾向としては、徐々に薬理学的な効果が低減していく傾向、言い換えると薬剤耐性が不可避である、という厳しい現実があるのです。

それでは薬への依存性が嵩じて治療に難渋している精神疾患の方々は、どのような要因が疾患や不調の原因と考えているのでしょうか。実に多くの患者が口にするのが「職場や仕事のストレス」です。これは若い世代も含め、20~50代の勤労者層すべての世代にみられる一般的な傾向となっています。

一言で「職場や仕事のストレス」といいますが、それには一体どのような要素があるでしょうか。一昔前には「毎日のように残業が続いてヘトヘトだ」あるいは「深夜まで仕事が終わらず、とにかくイライラする」など「長時間労働」を背景とする心身の不調が目立ちましたが、ここ最近は従来よりも少なくなっています。

それと並行して多いのが「職場の人間関係」にまつわる一連のストレスです。以前はよく「課長にひどく怒られて、うつ状態になってしまった」といったエピソードをよく耳にしました。いわば「パワハラ上司」による人間関係のストレスといえますが、これは多くの企業が「パワハラ対策」に取り組んだ結果、明らかに減少してきました。

最近むしろ目立つのが「社内の意思疎通がうまくいかず、気分がへこむ」あるいは「職場内で派閥争いやイジメがあり、気分が憂うつ」といった、職場に於ける人間関係上の問題が影響したようなメンタル不調がたいへん多くなっています。一方で2020年以降は「テレワーク」普及の影響も明らかとなってきました。

そのような長時間労働や職場内コミュニケーションに影響された複雑な問題が、企業の従業員にとって深刻なストレス要因となっているのは論を待ちませんが、その影響で心身にわたる不調に実際に見舞われるかどうかについては、我々が想像するよりずっと大きな個人差があるのが現実です。

すなわち社内に特定のストレス要因があったと仮定して、そのために心身の不調に見舞われてしまう社員と、体調が比較的保たれる社員とがいるものです。つまり実際には、仕事や職場のストレスを受けやすい人と、あまり受けにくい人とがいるのが実際のところです。

それでは何故そのような個人差が存在するのでしょうか。実は、それを考えるうえで非常に大切な要素となるのが、栄養バランスとりわけビタミンB群などのビタミン各種、それに鉄や亜鉛などのミネラルであり、その栄養を活用する営みである「代謝」なのです。

次回以降は、ストレスによる心身の不調と、栄養バランスおよび代謝との密接な関係について、順を追って説明していきます。